ヘミングウェイとゲルホーン

HBOのドラマだ。154分、2時間半以上の大作だ。日本ではゲルホーンがまったく無名であるために、邦題は『私が愛したヘミングウェイ』に変えられてしまった。だが、これはゲルホーンの回想録であり、まちがいなくゲルホーンの方が主役だ

ヘミングウェイについては、その同性愛的傾向が近年よく論じられる。この映画も、当然、それを踏まえて描いている。そのことを知らないと、やたらと女好き、というより、やり好きのバカにしか見えないくらい、そちらのシーンが延々と出てくる。とはいえ、最近の女子学生ともなると、私はちょうどそのあたりに関心のあるお年頃なので、とても興味深く楽しめました、なんて、余裕綽々たるコメントを書いて来たり。

ちょうど半分のところ、映画完成講演のところで、ヘミングウェイの登壇よりゲルホーンの方が圧倒的な喝采を受ける。このあたりから製作者の本音がだんだん明確になってくる。優しかった妻に罵倒され、ゲルホーンを前妻の言葉の受け売りで引き止め、カリブ海でドイツの潜水艦を沈めると豪語する行動派の茶番、そして、事故、病院、自殺。一方のゲルホーンは、ノルマンジー上陸作戦、ダッハウ収容所の命がけのスクープで、一流ジャーナリストに。

もちろん、彼の独特の文体は、まがうことなき天才だ。だが、フランコムッソリーニと大差ないマッチョイズムは、三島由紀夫と同じように、同性愛的傾向と表裏一体。ガラス細工のように脆い繊細さの裏返し。一方のゲルホーンのマニッシュな割り切りは、ジェンダーをも超越している。ただ、ゲルホーンを初めとして、この作品の製作者たちにユダヤ系が多いのが気になるが。