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ティエポロとドニゼッティ

 列伝ものは、ウソとヨタだらけでおもしろい。近年は、ヴァザーリ(1511-1574)を好んで繰り返し読んでいる。興味深いのは、彼がチマブーエ(1240-1302)とか、ジョット(1267-1337)とかのような、初期ルネッサンス画家を絶賛していること。まあ、原点だから、ということもあるのだろうが、運慶や快慶(1200頃)の理知的で大胆不敵な日本の彫刻を知る者としては、あいつら、どう見たってヘタだろ、と思わざるをえない。まあ、イタリアのルネッサンスなんて、そんなもんだ。

 むしろ魅力的なのは、ヴァザーリより後のルネッサンスの爛熟時代、新古典主義の直前。ティエポロ(1696-1770)のように格調高く、崇高で、そのくせ軽妙な明るい芸術は、日本には無い。イタリアの繁栄を見せつけられる。以前は、イタリアオペラというと、ヴェルディの『アイーダ』(1871)みたいな、どでかい悲劇をよく聞いていたが、ありゃミラノオペラで、ぜんぜんイタリアっぽくないのに気づいた。ドニゼッティの『愛の妙薬』(1832)やプッチーニの『ジャンニ・スキッキ』(1918)のように、巨大遺産と恋のバカ話がくっついてしまったみたいな方が、いかにも太陽の国っぽい。

 明るく楽しい小都市群のイタリアは、その後、ミラノ的な大仰さ、ローマ的な陰湿さで覆われて滅びる。中産階級がいなくなったのだ。日本も同じ道をたどるのだろう。だが、せめていまは、昔に酔いたい。