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サスペンスミステリの緊迫感

 『ダイヤルMを廻せ』(1954)は、正確にはヒッチコックの作品ではない。もともとフレデリック・ノットのテレビドラマ(1952、当時のテレビは生放送のみでフィルムは残っていない)で、舞台再演でヒット。それをヒッチコックが映画にした。とはいえ、いかにもヒッチコック好み。というより、ヒッチコックが、そのサスペンスの手法を、その後にうまく取り込んでいった。

 フレデリック・ノットの作品としては、他にも『暗くなるまで待って』(1966)が有名だ。これも、翌年に映画化されている。サスペンス・ミステリの特徴は、犯罪が行われそうで行われない宙ぶらりんの緊迫感が主軸となるところ。犯罪が行われそう、ということを観客が知っていないといけないので、犯人側からの倒叙法が用いられるが、『ダイヤルM』のうまいところは、前半の犯罪は予定通りにはいかず、事件全体が宙ぶらりんになってしまうこと。これを真犯人が、むりやり別の犯人をでっちあげることで、前半終了。これで終わるかと思わせておいて、ミステリー作家が警視に真相を暴いてしまうが、警視が信じない。ところが、最後に警視は、犯人しか知り得ない秘密の暴露へ、犯人を追い込む。ここにも、もう一度、サスペンスが用いられており、クライマックスへ。

 

 このように、サスペンスの波をいくつも途切れなく成り立たせるために、観客の共感を、次々と別の登場人物に移らせていく技術はみごととしか言いようが無い。