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ミステリとしてのハードボイルド

 本格ミステリの話はいったん終えて、次はハードボイルド。同じ探偵小説ながら、かなり趣向が異なる。まず読者層。本格ミステリが有閑中産階級であるのに対して、ハードボイルドは、義務教育で識字率が上がった庶民を相手にするパルプマガジン(安紙雑誌)が居城だ。その主人公も、中産階級からのドロップアウトで、彼らの世界にいる。依頼者はカネの余裕がある中産階級ながら、本格ミステリのように、かれらの館の密室に籠もってはいられず、猥雑な庶民のちまたをうろうろして事件に巻き込まれる。

 ハードボイルド作家と言えば、ダメット、チャンドラー、マクドナルドの3人。だが、それぞれ時代が異なる。ダメットは、探偵出身の早すぎた庶民世界の作家で、サム・スペードを華麗に活躍させるが、その庶民志向で、本人が赤狩りに巻き込まれてしまう。チャンドラーは、本人がドロップアウターであり、戦中戦後の女性の社会進出のジャングルに生きるストイックなマーロウで当てる。マクドナルドのハーパーになると、庶民の立場から中産階級の欺瞞を裁くようなところがあり、いかにも元教員が書きそうな視点だ。

 日本でもハードボイルドファンはいるが、しかし、米国ではその後、このジャンルは、もっと度派手なアクションスパイ小説に客を奪われてしまう。とはいえ、後者も根は同じところにある。