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咲いては散りゆく桜を眺めて

 朝、町は、新生活に急ぐ人々で満ちていた。幼稚園や小学校まで、いかにも新入生と思わしき子供たちがうろうろ。それを、親が手を引き、地元のPTAが案内している。高校生や大学生も、新たに学校を変わり、また、学年を変わり、緊張した面持ちだ。まだスーツが肩から浮いているような新入社員も多い。

 そして、大学も、今日から講義。二十年来の大学教員ながら、私も、新学期は、新しい学生たちを迎え、毎度、いささか身構える。以前の教員なら、百年一日のごとく、古いノートを読み上げるだけでよかった。だが、いまは、毎年毎年、世の中があまりに激変していく。まして今年は、あまりにすさまじい。ともに今を学ぶという覚悟がなければ、教員は、学生に遅れをとることにもなりかねない。

 かつて良い思いをしていた人々は、いまだにまだ、がんばれば昔が取り戻せると信じている。だが、マクロ的なものを検討すれば、すでに2007年あたりから、すべてが衰退の兆候を示していた。今回の災害と事故は、その引導にすぎない。昔の話ばかりして、無理を重ねても、散っていく桜を戻すことはできない。それよりも、いま、目の前にあることの中に、幸せを作り出すこと、日々新たに咲く美に目を向けることこそ、いまを生きている者の務めだろう。