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『日本沈没』の思想

 教授会で出校。関西の日常は、テレビの中と地続きとは思えないほど、以前と変わってはいない。ただ、スーパーのなにがあったかわからない空っぽの棚が、事態の異様さを感じさせる。

 2001年の911事件の前、1996年に、ホワイトハウスが敵の直撃を受ける『インディペンデンスデイ』という映画がハリウッドで作られていた。『日本沈没』も、原作に近いかたちで、2006年に唐突にリメイクされている。そして、昨年10月10日にテレビ放送。人間の生存本能というものは、集団において、地震速報並みに、迫り来る危機を事前に感じ取ることができると思わざるをえない。

 危機が迫っていても、あえてなにもしない、という選択。そして、危険地域からの集団疎開。この現実が、あまりに映画のままで、驚くばかりだ。実際、海外では、この映画と、いまの現実のイメージが重なってしまっているらしい。人工地震のウワサも、もともとの出どころは、この映画だろう。

 それにしても、小松左京は、すごかった。アーティストの仕事は、坑道のカナリアのようなものかもしれない。菅野よう子の「きみでいて」を聞きながら、大学の坂の桜のつぼみを見上げ、花が咲くのを待っている。