芸術と麻薬

 芸術史や美学の本にもまず書いてないのは、なぜなのだろう。とにかく、芸術は、太古の昔から、麻薬漬けだ。麦角の秘密は、古代ギリシアや中世の魔女、そして、現代のLSDまで延々と舞踏や絵画、音楽に影響を与え続けている。というより、それこそが、芸術の原動力になってきたとさえ言える。

 しかし、ゲーテベートーヴェンの時代、芸術は大きく転換した。自然酩酊任せの幻想の表現から、その幻想の奥の真理の探究へ突き進んだ。その後にも、ベルリオーズやみたいなのが出てくるが、すでに主流ではない。で、学生に『レクイエム・フォア・ドリーム』を見せている。この映画自体が、かなりアシッドで、音楽や映像がいっちゃっている。しかし、このことは、べつに薬なんかなくても、芸術で幻想が表現でき、体感できてしまう、ということでもある。

 それにしても、後味の悪い映画として世界でナンバー1に選ばれただけのことはあるなぁ。救いがない。失敗したゲームのバッドエンドのように、どんどん落ちていく。そのくせ、これでもか、というように終わらない。薬がやばいのは、むしろ簡単に致死性がないことなのだろうなぁ。あの事件の後も、六本木あたりには、こういう部屋があるのだろうし。