環境ファシストたちの狂気の陰謀

/環境運動による経費節約より能率低下の収益ロスの方が甚大だ。そのエセ科学で企業活動が乗っ取られれば、会社は潰れる。世界の優良企業に比して、この国の職場環境がいかに異様な狂気と貧しさに取り憑かれていることか。/


 知り合いに、すごい人がいる。スナック菓子やインスタント食品など論外。ソフトドリンクも、添加物だらけだとかでダメ。肉類は、人間をアレルギー体質にしてしまうということで、いっさい口にしない。サカナも、最近は深海まで汚染されているから危険だそうだ。野菜や豆腐も、自然食品屋の完全有機無農薬のものしか買わない。飲み物は、変な根っこの茶だけ。紫外線を避け、雨戸を閉め切り、壁という壁に藁で縛った備長炭をびっしりと吊している。風呂は、十年来、水を換えておらず、その真っ黒な湯に浸かると体から赤や黄色の毒素が浮き出して、肌がツルツルになる、という。一方、水道水は、触れただけでも、塩素で皮膚が焼けただれてしまうとか。テレビやパソコン、携帯電話は、電磁波で脳障害になると言って、持っていない。インドのなにかに凝っていて、ロウソクの灯の下で、その手の本を読み、宇宙の愛を感じて、日々、涙しているらしい。結婚していたが、この「健康的な生活」を強いたため、ダンナや子供たちは数年前に逃げ出した。電話で話すかぎりは、いたって普通だが、やっていることは、どう聞いても異常だ。

 だが、こういう人物は、近頃、会社にもよくいる。冷房28度、暖房20度と言い、4時を過ぎると空調自体を止めてしまう。廊下のスイッチには変な時限装置がついており、15秒で真っ暗。部屋の中の蛍光灯もすでに半分は外され、個々に小さな電気スタンドを使う。昼休みには、その残りの半分の明かりさえも消されてしまうので、薄暗がりの中、みんな、窓際でぼそぼそと食事。水道やトイレも、節水のなにかによって、ろくに水も流れない。パソコンは離席5分で完全停止。電話も、番号を交換に申告して外線につないでもらう。コピー1枚にも、まず上司の決裁。そのうえ、紙は完全リサイクルなので、表も裏もなにか書いてあり、どれが何の書類か、もうさっぱりわからない。

 仕事の能率も意欲も落ち、結果も出ない。だが、少しでも愚痴ろうものなら、目を向いて説教される。いいですか、この緑の地球が滅びてしまったら、会社もなにもあったものじゃないんですよ! 一致団結して、みんなで環境を守らなくてどうするのですか!

 十六世紀末、繁栄するフィレンツェサヴォナローラという神がかりの修道士が現れ、いっさいの風俗営業を禁止するだけでなく、町中の贅沢品を焼き捨て、市民たちに徹底的な質素倹約を強いた。また、ヴェトナム戦争と前後して、カンボジアではポルポト派が台頭し、すべてのインテリは反共産主義者だ、と叫んで、メガネをかけているだけで、それどころか、字が読めるというだけで、数百万人が虐殺された。やがてサヴォナローラは火あぶりになり、ポルポト派も内部粛正で消えたが、町や国も自滅してしまった。

 経営者は、環境運動が経費節約にもなると勘違いしているが、じつは能率低下による収益ロスの方が甚大だ。それも、費用軽減はいっときのフローだが、人材の流出、ミスの頻発、信用の摩滅など、ストックの傷みは計り知れない。そして、なにより恐ろしいのは、環境運動が企業活動そのものを乗っ取ってしまうこと。彼らにとって重要なのは、彼らのエセ科学な妄念のみであり、それで会社がどうなろうと知ったことではない。

 かつて国を失えば人は生きられないと信じて国を守ろうとした人々は、みな死んだ。いかに環境を守っても、会社を潰されたのでは、元も子もない。経営者の責務は、従業員が成果を上げられる職場を整え、会社を守ること。世界の優良企業と較べると、いま、この国の職場環境がいかに異様な狂気に取り憑かれ、自滅の道を歩んでいるか、よくわかる。