頭の良い人の頭の使い方

/要領が悪いのは、頭が悪いのではなく、頭を使っていないからだ。いきなり取っ組みかかっても、ミスも多くなる。まず頭で全体のイメージを掴み、枠組みと段取りを整えてしまえば、効率よく、結果を出すことができる。/


 問い、1から100までの総計は。答え、5050。頭の良い人なら、こんなの即答できる。1たす2は3、3たす4は7、7たす5は12、なんて、やっている人は、頭が悪いのではなく、頭を使っていないだけだ。問題が1から100までと言うのだから、まず1から100まで全部を頭に思い浮かべる。それを真ん中でぽっきりと折る。1と100、2と99、そして、50と51。ようするに101が50個。これなら暗算で充分。

 シロウトが家の設計に口を出すと、ぐちゃぐちゃになる。壁紙はどう、床はどう。建築家からすれば、そんなことは、後で考えればいいことだ。まず重要なのは、配管。キッチンとバスルームは表裏にし、その外側に給湯器。階段や二階の角々に通し柱。洗濯、買物、来客の動線の整理。家全体の有機的な融合性を、まとめてイメージする。

 教科書を憶えるのでも同じ。頭を使わない人は、1ページ目の1行目から読む。そして、2ページ目で頭がぼーっとしてきて、3ページ目でつっ伏し、そこにヨダレのシミをつける。これは「レンガ積み式勉強法」。一方、頭の良い人は、読んだりしない。まず、章扉ごとにざっくりと本を開き、全部で何章あり、各章が何の話か、ぱらぱら見て、繰り返し出てくるキーワードをマーク。そして、見開きページのどこにどんなキーワードがあるか、見て憶えてしまう。キーワードの前後のつながりは、それから後の話。これを「ペンキ塗り式」と言う。何遍も均質に眺めることで、全体の記憶をより鮮明にしていく。

 職人だって、頭が大切。たとえば、コックであれば、できあがりのコースの全体を考え、必要になる素材すべてをまとめて仕入れ、仕事の段取りを割り振り、時間のかかる下ごしらえから始め、その手すきの間に、冷めないものを準備する。いきなり包丁を握って、とりあえずそこらにあるものから刻み始める、というのでは、あまりに脳がない。

 ようは、これからすべきことの全体を頭でイメージできるかどうかだ。これが見えれば、そこで必要となる素材や道具、すべき個々の作業とその順序、そのムダのないはめ込み方等々もまた、そのイメージを鮮明にして行くにつれ、具体的に細かく見えてくる。そして、ある程度が掴めたら、あとはイメージどおりに作業していけばよい。

 イメージ・トレーニングなんて、体育会系でもよくやる方法だろう。コース全体をイメージし、また、レースの初めから終わりまでをイメージする。こうして、まさに頭で全身を最適に統合していく。一動作が終わったら、また次の一動作、というのではなく、一連の流れるような、たった一つの動作として全体を自分のものにする。

 経営でもそうだ。それぞれの部所は、それぞれ勝手に動いている。それぞれに自己中心的で自分勝手なことしかしない。だが、経営者は、個々の細かなことはともかく、全社の中で動いている多様な部所、多様な人々の全体像を一掴みにして、その流れをコントロールする。そんな超人的な、と思うかも知れないが、たとえば、我々でも、朝のターミナル駅の雑踏全体をイメージすることはできるではないか。個々の人の動きの細部にこだわりすぎると、見えなくなってしまうが、さまざまなエピソードの集積として、それは心の中に見えてくる。そして、これが、1から100までをまとめて見るということだ。

 だれでも頭のひとつくらい、首の上に乗っかっているだろう。問題は、それを使うかどうかだ。考えもなしに、いきなり玄関から作り始める大工には、家は建てられない。仕事でも、いったい自分が何をするのか、まずその全体を掴み取ることから始めるべきだ。