洞窟の中

 暑いので洞窟に行った。いわゆる鍾乳洞だ。それほど大きいものではないが、地下水が豊富で、とにかく涼しい。ここで暮らそうか、と思いたくなる。天井は低いが、周遊路も整備されており、手すりがあって、足を滑らしたりすることもない。鍾乳石の見せ方もうまく、ひとつひとつ飽きさせない。そのうえ、いちばん奥には、これはすごい、という大滝もある。

 だが、なにがすごいって、これを観光開発のために掘り出してしまった人々だ。ここは入口が狭く、コウモリが出入りしているだけの穴だったのだが、山の地主が、この奥には、絶対になにかある、と信じ、自費を投じて、探検を始めた。この人に天賦の直感が無かったら、バブルのころ、きっと、表面からブルドーザーで石灰取りのために山ごと切り崩され、この見事な洞窟も、だれにも知られることなく潰されてしまっていたことだろう。

 昼もすぎると、夏場は涼を求めて大勢の人々が全国から押しかけてくる。しょせん田舎の山奥だから、どこぞの作りもののテーマパークのように、アトラクションたっぷり、飲食施設も充実、というわけにはいかない。だが、空は青く、山は緑。手作りジェラートもうまい。そして、子供の夏休みの冒険としては、本物の洞窟に優るおもしろさなどありえまい。