ビジネスパートナーを見極める方法

/車や靴は、身近すぎて、その存在を忘れてしまうもの。そして、その手入れの具合を見れば、その人の家族や友人、従業員や取引先とのつきあいの様子もわかる。/


 年来、ベンツに乗っている。Cクラスだから、大したものではない。が、自分が乗っていると、他のオーナーが気になる。やはり経営者や自営業者が多いように思われる。なかには芸能人や、いかにもその筋の方ということも。古いの、新しいの、小さいの、大きいの、いろいろあるが、気になるのは、その手入れだ。

 雨が降ると、すぐにわかる。大切に乗っている人の車は、雨粒が水玉になって転がり落ち、水滴がまったく残らない。親水コーティングでも、潮が引くように、雨はきれいに流れる。だが、ボンネットや天井からいつまでも水が消えない、かわいそうな車もある。もともと良い車は塗装がしっかりしているのだから、ふつうはそんな風にはならない。もしかすると、車の良さにまかせ、手入れしなければならないことを思いつきもしないのかもしれない。それとも、気づいていながら、ケチゆえに、あえて怠っているのか。

 また、昔から、ホテルマンや女将は、頭を下げて客の靴を見る、と言う。それで、部屋割りを決める。豪華な調度品が置いてあるのだから、がさつな人を良い部屋に通すわけにはいかない。どうせそんな人には、ものの価値もわからないだろう。かといって逆に、目利きの客を粗末な部屋に通したのでは、名門としてあなどられ、様子を言い広められて、世に恥をかく。見極めを間違えるわけにはいかない。

 靴は革でできている。ある日、突然に磨いても手遅れだ。乾燥のひび割れなどは、クリームを塗っても隠せない。また、毎日、同じ靴を履きっぱなしでほったらかしていると、蒸れて革の腰が抜け、よれよれになる。ただ日々の地道な手入れによってのみ、革独特の艶としなやかさを出すことができる。そして、それは、見ればすぐにわかる。

 車や靴は、その人のもっとも身近なもの、身近すぎて、その存在を忘れてしまいがちなものだ。だから、車や靴を見れば、その人が、家族や友人、従業員や取引先にどのように接しているかがわかる。ろくに車や靴を手入れしていない人とかかわっても、あなたは、その車や靴と同じように、使うだけ使われて、そのままゾンザイにほっておかれるだろう。かといって、次から次へと新しいものに取り替えてばかりの人と関わっても、あなたもまた、
最初だけはちやほやとされ、そして、すぐに別の人に乗り換えられるだろう。

 もうひとつ大切なこと。価値もわからず、見栄だけで大物ぶって無理に良い車、良い靴を使っている人は、けして長続きしない。これを『易経』で「亢龍(こうりゅう)」と言う。こんな人と関わるのは、まさに相場の高値掴み。ヘタをすれば、いっしょに崖の底まで転げ落とされることになる。一方、ホテルマンや女将がひいきにするのは、いまの見栄っぱりより将来の大化け者。分相応の中でやりくりし、長く使える良いものをうまく選び、それを大切に手入れしているのなら、目利きでもあり、しだいに周囲の人望も集まるだろう。こういう有為の人物を『易経』では「潜龍(せんりゅう)」と呼ぶ。

  ビジネスパートナーでも、結婚相手でも、同じこと。自分や会社の将来を賭ける相手なら、ふんぞりかえって自分の部屋で漫然と相手を待っているのではなく、自分から玄関にまで迎えに出て相手の車を眺め、降りてきたら深々と頭を下げて相手の靴を見てみよう。このように下手に出て図に乗るような相手なら、それは、その程度の人物。もっとも、相手の方がさらに深々と頭を下げてきたなら要注意。あなた自身もまた、相手に見極められる存在であることを忘れないように。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka 純丘曜彰教授博士 (大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン)