随筆漫文とエッセイ

 日本で文学のジャンルというと、小説か随筆、さもなければ批評かルポ。だが、海外の高級誌を見ていると、どうも、これはおかしい。小説と言っても、ロマンとノヴェルは別ものだし、エッセイと言えば、人文思索や学術論文まで含む。日本の随筆漫文は、むしろコラムに近い。批評やルポも、一般に広くストーリーと呼ばれており、日本のような意見表明ではなく、ジャーナリストが徹底的に事実調査に基づいて冷徹に書くことになっている。

 日本の奇妙なジャンル分けのせいで、もっとも欠落したのが、エッセイだろう。欧米で作家(ライター)と言えば、むしろこの分野の著者をさす。そこらのチンケなタレントくずれが書き散らしたような雑文ではなく、もっと格調高く、教養に溢れる文章だ。ギリシア・ローマ以来の演説文の流れを踏まえ、人の心を動かすような力強さがある。それが、まさに言葉の力だ。

 日本にも、『徒然草』や『言志四録』など、そのような人文思索の歴史がないわけではない。だが、江戸時代以降、庶民の読本のたぐいに侵略され、およそ根絶やしにされてしまった。いまでもそのような文章を書ける文人たちがいないわけではないが、その文章を載せるところは多くはない。小説家や脚本家、雑文書きばかり。だが、教養の裏打ちのない言葉は、軽く、むなしい。