アーティストの卵と貧乏

 ここのところ、『のだめカンタービレ』だの、『はちみつとクローバー』だので、芸術系の大学の存在が世間にも知られるようになってきたが、今シーズン、テレ朝系で始まった『崖っぷちのエリー』は、リアルでつらいな。たしかに、子供のころから家に余裕がある、文字通りの道楽娘、道楽息子もいる。だが、そんなのばっかじゃない。食費を削って絵の具を買っているなんて、ほんとうに良く聞く話だ。電車賃がないから、展覧会を見に、炎天下を歩いて街まで行く、なんていうすごいやつもいる。

 でも、その苦労はけっしてムダではない。森村誠一だって、嫌で嫌で仕方なかったホテルマンの仕事をしていたからこそ、その後の人物描写の幅が広がった。浅田次郎だって、怪しげな裏家業に足を突っ込んでいたからこそ、生の人間の機微がわかる。足りない絵の具をむだなく使えるように、まずよく見ること。また、その絵の具を買うために、いろいろな経験を積んで、現実の多くの触感を得ること。それがいつか作品に命を与える。

 ポッと出で賞を取り、知名度を得て世を渡る連中をうらやめば切りがない。人は人、自分は自分。自分の境遇の中で作品を、そして自分を作ることをアートとして楽しむこと。難しいが、それができた者だけが、難局を乗り越えて、ほんとうのプロになれる。