資生堂への杉山の呪縛

 昨今、メディアでPhotoshopの修正を施していない写真など、まず見ることはない。しかし、絶対に写真修正をしてはならない業界がある。化粧品だ。Photoshopで化粧ムラやニキビ跡を消すようでは、化粧品としての性能にかかわる。

「嘘をついてもばれるものです」と言い残し、1973年に杉山登志は自殺した。重要なのは、杉山が資生堂のCMを中心に活動していたことだ。プラトンに言わせれば、化粧こそまさに嘘にほかならない。杉山がこの言葉を残した意味は、まさに資生堂に向けられたものだ。にもかかわらず、数年前、資生堂がしれっと杉山のドラマの一社スポンサーになっていて驚いた。間に挟まっていた新作CM群は、杉山へのオマージュとしてすばらしい出来だったが、根本のところがわかっていない。

 この問題は、資生堂だけではない。CMはイメージを売る。イメージは現実ではない。もとから嘘なのだ。買ってみればすぐにわかる。それとも、繰り返しCMを流し、ずっと嘘のイメージで幻惑し続けるのか。だが、女性は鏡で自分自身の顔を見つめる。化粧品や女優を見るわけではない。杉山は、素肌のきたないモデルを使った最期の作品に、わざとすっぴんの女子高校生を撮し込んでいるぞ。