存在しないブランド

エルジンの野鳥掛時計を十年以上も愛用している。毎正時に鳥が鳴いて、一日の時の移りゆきに感慨深い。ところが、最近気づいたのだが、エルジンという米国の時計メーカーは、すでに1968年に消滅している。では、私のところにあるものは偽物か。いや、それどころか、いまもエルジンの名で最新のソーラー電波クロノグラフまで出ている。どういうころだろう?

調べてみると、エルジンの名だけを日本の山口の会社が買ったらしい。技術的にも、革新的で優秀だ。だが、こういうのを、150年の伝統あるブランド、と言うのだろうか。なんともうさんくさく見えてしまう。なんにしても嫌なのは、野鳥掛時計でもなんでも、中国に大量発注して売り切りでおしまい、という経営方法だ。これはバッタ屋のやり方で、定番商品を長期保証するまともなブランド企業がやることではない。

もちろんブランドの売買というのはめずらしいことではない。だが、通常は、工場や従業員を維持し、技術ノウハウを継承してこそ意味がある。残念なことに、売られたエルジンは、名前のほかには、買うに値するだけのものがすでに残っていなかったのだろう。