世阿弥奥義秘伝:逆演技

キャンパスでよく学生が演劇の練習をしているが、けっこう笑える。いっしょうけんめい演技をする演技、つまり役者のふりをしているからだ。だが、いくら役を演じている役者のふりをしても、肝心の役どころは、それではそこに立ち現われてはこない。

世阿弥の奥義秘伝に逆演技というものがある。老人を演じるなら、若作りをせよ、というものだ。いくら役者が老人ぶっても、それは老人を演じているようにしかならない。ところが、年甲斐もなく無理に若者ぶると、逆に老人くさくなる。若い人は、ぜったいに若者ぶったりしないからだ。同様に、強がれば強がるほど、弱いチンピラ風になり、腰が低ければ低いほど、大物に見える。

秘すれば花、という世阿弥の演劇哲学も、この逆演技のワザの応用として理解されなければならない。マッガフィンのように隠せば隠すほど、注目を集める。軽々しくドタバタと暴れるより、舞台の真ん中で腕を組んで、じっと、ウーン、と、静かにうなり、それで、さあ、どうなるどうなる、と観客の目を惹きつけてこそ、花形スターというものだ。