時事問題を解く

なぜ、いまさらナラトロジーなんか整理し直しているか、というと、コマ数の都合で、「時事問題を解く」などという、変テコな科目を文芸学科で割り振られてしまったからだ。まあ、適当にやってくださいよ、という話なのだろうが、一年間も世間話をするのは、研究者としての沽券に関わる。そのうえ、私はヒネクレモノだ。で、きっちり、みっちり、文芸の時事性の問題をやってみせやしょう、というわけで、時制を採り上げている。

ジュネットは、話が機械的で、説明しやすいのだが、実際の多様な文例を知っていると、鬱憤が溜まる。学校作文ならともかく、プロの小説では、インスタンツを打ち破り、地の文とミメーシスな口調とが交錯する文体の方がむしろ一般的だ。(たとえば、この節の第一段落がそう。)この人、あまり実際の小説を読んだことがないのではないだろうか。古い論理実証主義マッピング理論が基底にあるところなど、頭の中だけで文芸論を組み立ている感じだ。まあ、初歩として学生に教えるには、いいか。

で、事例を挙げるために、あちこちの小説を猟読しているのだが、名作とされるものは、やはりすごい。読者がするっと読んでしまうようなところに、とんでもない巧妙な仕掛けが、じつに簡潔に施されている。こっちの方が、とても勉強になる。