悪魔との再契約

ファウスト博士は、世界のすべてを知るために、悪魔に魂を売る契約をした。しかし、そんな力のある悪魔がいるなら、会ってみたいものだ。我々の中の悪魔は、年来の窮屈な生活に押し込められ、やせ細り、息も絶え絶えだ。たまに遊んでやろうにも、立ち上がれもしない。

妄想、鼻歌、独り言。子供の頃、だれもが自分の中に、小さな狂気、大きな才能を持っていた。ところが、自動車を運転しながら妄想は危険だ。満員電車の中での鼻歌は迷惑だ。独り言も、気味が悪い。こうして、混み合った社会において、人は、おとなになるにつれ、自分の中の狂気と才能を自分で絞め殺していってしまう。

しかし、ある種の悪魔的な力こそが、閉塞する現状を打開し、新たな展望へ導く。その力によってのみ、いまここにはない理想を人は打ち立てることができる。ニーチェは、それを超人の創造的破壊と言い、張横渠もまた、去聖のために絶学を継ぎ、万世のために太平を開く、と言った。善人ぶった詐欺師たちを避け、誠実なる夢想者となるために、我々にはいま、力が必要だ。