読書家のためのミカン箱の効用

 引越しなどで本の扱いに困惑している人も多いだろう。運送業者の段ボールに入れると、縦横の収まりが悪いだけでなく、めいっぱい入れないと、箱を重ねたらつぶれてしまう。箱の強度が足りないのだ。かといって、めいっぱい入れたら、重くてシロウトには動かすこともできない。

 だったら、ミカン箱だ。本には10キロ箱が最適。スーパーに行けば、いくらでもタダでくれる。そのうえ全国統一の完全規格サイズで、強度もケタ違い。重ねても崩れない。おおよそ10キロから15キロで満杯になり、横に手持ち穴もついているので、女性でも持って運べる。実際、古本屋のプロは、みんな昔から10キロ用ミカン箱を使っている。

 そもそも、このミカン箱は、画期的なものだった。それまで、紀伊国屋文左衛門のころから、ミカンは運ぶのに面倒なものの典型だった。果実自体が弱く、せ水っぽくて重い。安価な果物にもかかわらず、いちいち丁寧に木箱に入れて運ぶしかなかった。

 それは1959年のことだった。戦後復興の木材不足で、木箱が手に入らなくなった。広島果実連は、やむなくサントリーのウィスキーの空き箱を使った。これが、いい。で、段ボールの開発となったのだが、広島の場合、サントリーの宮島工場があって、空き箱が簡単に手に入るのに、わざわざミカン箱を買ってはくれない。しかし、日本園芸農業協同組合連合会は、その本拠地、静岡柑橘協連に導入を推奨した。レンゴーと日本紙業は、これに、破格の実験価格で応じた。まさに時代の先を見つめた大英断だった。そして、これをきっかけとして、ミカンはもちろん、その他の果実や野菜まで、段ボール輸送が一般化する。

 その箱は、Wフルートの耐水Kライナー。つまり、二重段ボールで、表面に耐水加工がしてある新紙。なんと贅沢な作りだろう。プラケースなどと違って、湿度も逃がすから、本がよれたり、かびたりしない。紙は紙で守るのが一番なのだ。もっとも、両脇に手持ち穴があるので、そこからの水や虫の侵入などには注意しなければならない。

 解体していないステップル二カ所止めでも、本を入れるのにふつうは問題はないが、いったんたたまれてしまった箱は、紙テープで、一文字止めではなく、十字止め、さらには王字止め(底の両縁と四隅を補強)をした方がいい。底にテープを貼った方が、ステップル止めよりも、箱を重ねたりするときの摩擦も減って、扱いやすくなる。フタ側は一文字で充分だが、手持ち穴にほんの少しだけかかるように貼って巻き込むのがコツ。こうすると、箱を持ち上げたとき、指が痛くない。ただし、中身の本にテープの粘着面がつかないように。 

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