ジャストシステムの迷走

 ジャストブログは無くなるそうだ。XFY BLOG EDITER も、すでに販売停止になっている。ここで書くのもはばかられるが、ジャストシステムという会社そのものが、この十年、迷走している。

 もともと私は、管理工学研究所の「松」を使っていた。1983年のことだ。当時、12万8千円もした。しかし、この「松」は、わずか2年で「一太郎」に敗退する。ばかみたいにプロテクトが堅くて、あほみたいに値段の高い「松」に比して、「一太郎」(当初はワード太郎)は、ルーズで、そこら中にコピーが蔓延していた。そして、MSDOS化とともに、私も85年に「一太郎」に買い換えた。

 その後、「一太郎」は、日本の行政や大学、そして企業の標準ワープロとなった。それゆえ、MSのWord が出てきてからも、その地位は揺るがなかった。しかし、一太郎は、その時点で、すでにパソコン用ワープロとして完成してしまっていた。それで、ジャストシステムは、作図のための「花子」だの、ロータス123のまねをした表計算ソフトだの、いらんソフト開発を始め、一太郎そのものも、MSまがいのいらん自動化機能だのを満載するようになっていく。

 ジャストシステムの失敗の元凶は、作家の紀田順一郎なんかに心酔し、日本語の言語学者たちに食いものにされたことだ。いったい連中に、どれだけ貴重なカネと時間を吸い取られてしまったのだろう。バージョンアップのたびに、変換効率が上がった、というが、一太郎を使っている人なら誰でも知っている。とにかくどんどん使いにくくなっていったのだ。やたら禁止用語、禁止文字だらけで、まともに変換ができない。どんな文章を書くかは、使い手の自由であるにもかかわらず、こういう言葉を使うべきだ、などという独善的な連中のせいで、一太郎は使いものにならなくなった。

 くわえて言語学者たちと組んで致命的だったのは、連中が日本語の字組規則をまったく知らなかったことだ。言語学者というのは、基本的に話し言葉の研究者であって、それは書き言葉とは異なる。ただ原稿用紙のマス目に書いているような連中にはわからんだろうが、平面での日本語のレイアウトや字組は、微妙な調整を必要とする。にもかかわらず、一太郎は、内部システムがポイントで動いており、ミリ設定をすると誤差だらけになって、規定フォーマットに収まらなくなる。日本語DTPの基本である0.25ミリ単位のQHシステムとも互換性がない。当然、縦書き横書きにしても、フォントのウェイト概念など、まったく理解していない。ただTTフォントを四角くベタ並べするだけ。まさに涙目。

 QuarkXPress は、デフォルトのままだと、逆にやたらカーニングしやがって、使いこなすのは面倒だったが、Adobe のIndesign は、これらの問題を一気に解消してしまった。もちろん当初は不安定だったが、DTPとして必要なことは、きちんとできた。ローマ字漢字変換についても、いまやグーグルが、独善的な言語学者などに頼らず、実際のネット上での使用分析で自動最適化するシステムを無料で提供してきている。この間、一太郎は、リラックスビューとか、ナレッジウィンドウとか、救いがたく役にも立たないもので、ゴテゴテと飾り付けられていっただけ。

 こんなの、ヴァージョンアップしても買い換える理由がない。いや、買い換えない方が、2004あたりの古いヴァージョンの方が、たんなるパソコン用下書きワープロとしては、実際、ずっと軽くて使いやすいのだ。そして、最終的にDTPとしてのデザインに凝るなら、まともに設定ができない一太郎などではなく、Indesign を使う。

 ジャストシステムは、遠からず管理工学研究所と同じ運命をたどるだろう。つぶれはしないだろうが、どうしようもない。主力の一太郎をDTP用としてきちんと仕上げず、よけいな仕事に手を広げすぎたツケが回った。これは、あきらかに経営者の責任だ。 


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