高速道路無料化ということ

 タダ経済が真に効果的なのは、公共問題においてだ。たとえば、高速道路無料化。休日限定で、1000円でも、あんな大渋滞が発生するのに、なにを言うのか、という人も多いが、あれが年中無料になると、突然にまったく位相の異なることが起きる。つまり、時間限定で、安くても有料なのと、完全にいつでもタダなのとでは、まったく意味が違うのだ。

 それは、バーゲンを見ればわかる。年中安値だったら、わざわざ人が買いに行ったりしない。いまだけ安い、というのが、むしろ人々を異常な行動に走らせるのだ。それは、いま買えば得をする、ということではなく、いま買わなければ損をする、ということになるから。店の方は、この顧客心理をついて、どうでもいいものほど、あえて限定販売にする。

 松下幸之助水道哲学というものがある。この世をものでじゃぶじゃぶにしてしまえば、貧困などという問題はなくなる。そして、そうすることこそが産業人の使命だ、という発想だ。実際、水だって、水路水道が整っていない時代には命がけで奪い合ったものだ。それが、安定供給されて、だれも惜しみなく人にも分け与えることができるようになる。

 古いところでは、織田信長楽市楽座も同様の発想だろう。販売特権が地域団体や同業者組合によって限定されているうちは、売り手主導の管理価格となり、市場が活性化しない。そして、その敷居を限定的に下げても、あまり意味がない。それどころか、かえってそこに需要が集中してしまい、利権が増す。そうではなく、全廃によってこそ、出品者も購入者も増え、多様化と安定化が図られる。

 ドイツやオーストリアなど、以前から高速道路は無料、ないし、年間パスポート式だ。渋滞するか、と言えば、一般道と同様、渋滞するときはする。フランクフルト周辺などがそうだ。しかし、あきらかに解消が早い。渋滞が起こり始めても、どうせタダなのだから、だれも高速道路にこだわらず、さっさと降りて下の道に分散する。そして、食事でもして時間調整し、渋滞の先まで行ってまた乗ればいい。(降りて乗り直すと、また1000円というのでは、無理だ。)そもそもインターの数がまったく違う。それはバイパス程度の感覚で、そこら中の一般道とつながっている。

 しかし、日本では、いまや反対が多い。巨大天下り組織の道路公団にくわえ、鉄道やフェリーなどが既得権を理由に反対しているだけでなく、一般国民まで、高速道路無料化で年中大渋滞が起きるかのような間違ったイメージを植え付けられている。むしろあの休日限定1000円という施策は、自民党の罠だったのではないか、とさえ思える見事な結果だ。この調子では、多数決では、無料化は実現しまい。


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