メッツのサロメのフルヌード

 おい、人をなめているのか。いくら、オペラは歌だ、ってったって、サロメだろ。ちゃんとダンスが踊れる人を出せよ。こんなおばちゃん(カリタ・マッティーラ)のシロウトくさいストリップなんか、どんな場末のつもりだか知らないけれど、見たかないよ。せっかくのシュトラウスの蠱惑的なリズムが台無しだ。だいいち、サロメって、少女、ってことになってるんだぜ。48だそうだけど、フケすぎだよ。額にシワをよせて歌うなよ。

 ユルゲン・フリムの演出もなあ、凡庸だよな。現代風にして、セットや衣装を安く挙げている。シェイクスピア・カンパニーの薔薇戦争とかだと、マフィアの抗争みたいでおもしろかったし、ジークラのステージ映画版は宇宙的な近未来を舞台にして預言的な雰囲気に満ちていたけれど、サロメをキャバレーにして、なんの意味があるの。(ヨハネ(ヨハナーン)だけは、ボロ衣装だが、どうみても、ジャック・ブラック。ようするに、清貧な聖者というより、たんなる小汚いデブ。殺すのがはばかられるような、神々しい威厳がないんだよなぁ。)

 なんにしても、オペラのプリマドンナは、ひどいのが多すぎる。安田大サーカスのHiroみたいな、結核病みのミミだとか、とんちんかんなエリックに愛されているトドのようなゼンタとか、化け物屋敷じゃないんだからさ。なんとかしてよ。だいいち男も、みんな太りすぎだよ。舞台に立つだけで人からカネをとる役者だったら、ちゃんと体重コントロールくらいしろよ。

 人の趣味はそれぞれだけど、でも、マッティーラのフルヌードで感動した、とか言っている変な人って、けっこういるんだよね。こういう目の悪い連中が、デブの役者たちを甘やかすんだろうな。太りすぎているから、みんな、舞台の上を右へ左へうろうろしているだけじゃん。ローレンス・オリヴィエの晩年だって、こんな間抜けじゃなかった。なんにしても、妙なオペラファンたちがデブ専趣味に文化庁の税金を勝手に使うのは気にいらん。

 原作者オスカー・ワイルドサロメ役を想定していたと言われるサラ・ベルナールを見てみなよ。そこに立っているだけで、ゾクっとくるような、まさにサロメの妖艶な魅力そのもの。神聖にして邪悪、清純にして退廃。俳優はこうでなきゃ。

 いまやオペラもハイヴィジョンのミュージックビデオとして見る時代だ。大御所だかなんだか知らないけれど、ヴィジュアルに耐えられない古い世代には、とっとと舞台から御引退願いたい。そして、たとえ声が未完成でも、情熱と狂躁に溢れる、本物のサロメが見たい。あのシュトラウスの音に見合うだけのアクロバティックなハイジャンプで、ステージを踊り抜ける奔放な若さが見たい。その恐るべき無謀な若さこそが、サロメのテーマじゃないのか。その止めようもない若さがないのなら、歌など、なんの意味もないじゃないか。


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