CMソングの作曲家たち

 いまさら井上大輔などよく聞いている。天才的なCM作曲家だった。ソロになったばかりの頃には阿久悠の詩で怨歌調の変な曲も作ったが、彼自身の基調は米国のハイセンスなポップのジャパナイズであり、ブルーコメッツの当初からJポップの先駆者の一人として活躍し、いわゆる歌謡曲はもちろん、アニメソングまで、あまりにも多くのヒットを残した。

 同じ作曲家でも、筒美京平のような歌謡曲の作曲家とCMソングの作曲家は違う。歌謡曲は、タメの落としがあってのサビの登りだが、小林亜星を嚆矢として、井上大輔松任谷由実、EPOなどのCM作曲家は、いきなりのサビ、もしくは、出だしの4小節で勝負をかける。なにしろ、CMは15秒しかない。サビをリフしたら、時間いっぱい。サビでは5度飛び、さらには、あえて不安定に6度なんていうJポップらしい飛び方をする。長7のダイアトニックな曖昧さを経過音に混ぜる。こういう意味で、瞬時に視聴者の耳を引きつけなければならないCMによってこそ、Jポップというものができてきたと言ってもいいだろう。

 彼らの曲は、いつでも歌謡曲としても通用する。それも、いきなり売りのサビから始まる曲が多い。もっとも、手抜きの結末なしで、サビのリフのアドリブのままFOなんていうのも多い。もっとひどいのになると、テンポを変えて、どこぞの曲のコード進行のパチなんていうのもめずらしくない。それでも、原曲よりずっとJポップさが鮮明になっている。

 驚くべきことは、なんにしても、彼らがとてつもない量産家だったことだ。瞬間的にキャチーなメロディーなどというものが、これほど商業的に極め尽くされたことは、すばらしい。だらだらとしたリフやつなぎが多い、それどころかサビさえも弱いもともとの欧米のポップと比べると、この特徴は注目に値する。

 しかしながら、いまやCMソングの時代は、終わってしまった。テレビから聞こえてくるのは、クラシックに歌詞をつけただけとか、昔のヒットした歌謡曲の使い回しとかばかりだ。たしかにクラシックや昔の歌謡曲も、メロディがよく知られているという意味でキャッチーだが、あのころののCMソングの持っていた鮮明な時代感覚には欠ける。商品そのものにも、たいした新鮮さがないのだから、仕方ないが。

 井上大輔は、JR東海の社歌なんていうものも作っている。「君をのせて」。かの「国歌」に並ぶ名曲だろう。ペドロ&カプリシャスにいた郄橋真梨子が歌っている。これを聞くと、どこか遠くへ旅に出たくなる。

http://www.youtube.com/watch?v=xTvcBu8eAjU



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