ハンニバルに行きたい

 ハンニバル、ったって、レクターじゃないよ。まして、北アフリカカルタゴも関係ない。地名のハンニバルだ。

 ミズーリ州ミシシッピー川のほとり。行ったことはないが、その町の様子はよく知っている。もっとも、いまから150年も昔の様子。トム・ソウヤーとハックルベリー・フィンがいた町。

 ディズニーが、ディズニーランドを作るとき、その中心に据えたのが、トムの中州島。彼が自分で設計した。それくらい、彼の原点となる、大切な故郷の物語だ。ウォルトの農場は、ハンニバルのさらに西の荒野にあった。そして、ハンニバルは、彼にとって、その救いのない荒野からの唯一の出口だったが、そこには容易に越えられない広大な川が横たわっていた。

 いまは、昔の物語に頼るだけの、さびれた観光地らしい。しかし、それは昔も大差なかったことだろう。あれがトムの家、これがベッキーの家、などというのがあるそうだが、まったくどうでもいい。というのも、ほんとうに『トム』や『ハック』を読み込んでいれば、どこになにがあったか、なんて、もっとよく知っている。

 というのも、トウェインが水先案内人だっただけに、方角や月の満ち欠けがかなり正確に小説に書き込まれているからだ。トムの家があったのは、町の南の通りを坂の上まで登ったところ。この北の方に事件の墓場もある。一方、ハックのねぐらは、川岸を北に上がったところの山裾の森。当然、例の洞窟も、町の南に実在している。

 ただ、川の様子は大きく変わってしまった。中州の形も、当時の地図とはぜんぜん違っている。だいいち水かさが昔より少ない。それでも、いつか行ってみたい。西部へ向かう覚悟を決める町。そして、東部で出て行くために川を越えなければならない町。その町は、文字に残らなかった多くのドラマがあったに違いない。