就職のためのレトリック1

 学生も走り回っている。三年生の就活だ。うちのゼミの場合、9月から、18万円もする日経ビデオの「就職活動のすべて」だの、ちょっと古いが「面達」のビデオだの、徹底的にイメージでトレーニング。場慣れしていないと、実力の発揮のしようがないからねぇ。

 昨今の世間の話を聞くに、有名大学が有利、などということがなくなってきているそうだ。単純に学力テストだけでやれば、受験勉強を経てきた連中が圧倒的に強いに決まっている。しかし、世の中は理屈ではない。人事部としては、世間体だの、人脈の広がりだのを考慮して、出身大学のバランスを考慮する。この結果、やたら特定の有名企業に集中したがる有名大学の方が、実力のわりに不利、一方、珍しい大学から来た学生の方が、妙に優遇される、ということになる。

 だいいち、現実問題として、学生ごときが考えている実力などというものは、一般社会では屁でもない。実際のビジネスのほとんどは、アポとって、書類を作って、会いに行って、雑談しながら売り込みして、相手の意向を取り入れ、商品を手配し、カネ勘定の始末をするだけのこと。

 たとえ「クリエイティヴ」な仕事だろうと、クリエイティヴなのはその書類と商品を作る部分だけで、大半は、こういう「打ち合わせ」だ。だから、どんな仕事でも、学力なんか、きちんと書類が書けて、計算ができればいい。ぜんぜん才能のないやつでも、世渡り上手というだけで業界で生き残っているやつはいくらでもいる。逆に、打ち合わせ下手では、どんなに才能があっても、仕事にはならない。

 で、そのほとんどのことは、学力テストなんかではなく、エントリーシートや面接でわかる。エントリーシートが小汚いやつが、仕事の書類をまともに作れるわけがない。面接でうまく話をできないやつが、打ち合わせで商品のことまで話を詰められるわけがない。