ハードボイルドとオフビート1

 「ここは警察じゃないよ」と聞いて、「開けないとぶっちゃうぞ!」などと言うやつは、ここから先を読む資格はない。その元ネタは「母に代ります」だろ! で、ハードボイルドだが、その根にあるのは、徹底的なオフビートだ。

 オフビートという言い方は、オンビートがあってこそのものだ。2拍目4拍目などと書いてある説明があるが、それは誤り。拍に乗っているならオンビートに決まっている。だいいち、1拍3拍の強と2拍4拍の強の違いだったら、全体がずれるだけ、ないし、メロディーがアウフタクトになるだけで、違いは生じない。

 ところが、実際のオンビートとオフビートは、メロディなしでも、耳で容易に区別できる。というのも、ロックやタンゴがオンビートよりさらに前にのめるアップビート(ヒッカケ)系であるのに対し、ジャズやスカのオフビートは、むしろバックビート(日本語で言うタメ)を特徴としている。つまり、裏拍以上にアタックの位置が遅れているのだ。

 オフビート映画というと、ジャーミッシュ、カウリスマキコーエン兄弟あたりが有名だが、彼らに強い影響を与えたその嚆矢は、なんと言っても日本の小津安二郎だろう。熱海に行けば、隣室は深夜まで宴会騒ぎ。それでいて、老夫婦は、よく寝られなんだ、いやいびきをかいとった、そうですか、という調子。これって、深夜の隣室の宴会騒ぎに対する一般的なリアクションを外すことで、東京のオンビートから外れた夫婦の人柄や生き方を表現させしめている。

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