本格ミステリの定義(決定版!)4

 ノックス師もまた、このデテクション・クラブの会員であったために、しばしば「ノックス師の十戒」が「デテクション・クラブ誓約」と取り違えられがちだが、まったくの別物だ。まして、「ヴァン・ダインの二十則」は、デテクション・クラブでは認められていない。どのみち、これらは、おもしろいデテクションのための要諦であって、ルールではない。

 さて、誓約を整理し直すと、じつは次の2点に要約される。

1 探偵が機知によって犯罪を解くこと

2 読者に手がかりを隠さないこと

 これは、作者の代理である探偵と読者の知恵比べであり、ゲームとしてフェアでなければならない、ということを意味している。読者が探偵に勝れば、結末を待たずに、犯人を当てることができる。しかし、結末に至るまで、論拠立てて犯人を確定することができなければ、探偵、つまり作者の勝ちだ。デテクションは、内在的には、探偵と犯人の知恵比べの構造を取りながら、じつは、外在的には、作者と読者の知恵比べとなっている。そして、後者の外枠構造においては、作者は、むしろ犯人を代理人としている。

 ここにおいて、うまく真に解くことが求められる。犯人が当てられればいい、というものではない。探偵も、したがって、読者も、以下のものを用いたのでは、機知によってうまく真に解いた、とは言われえない。

a) 天の啓示

b) 女の直感

c) マンボ・ジャンボ(迷信や妄信)

d) ジガリー・ポーカリー(はぐらかしやちょろまかし)

e) 偶然

f) 神の行い

 この部分が、デテクションをミステリの中でも特異な周辺部へ押しやる原因となっている。ミステリのくせに、ミステリらしいオカルト的トリッキーが禁じられているのだ。


純丘曜彰ブログ速報版はこちら:http://sumioka.justblog.jp/blog/