ワイドスクリーン・バロック1

 と言ってわかる人にだけ書いている。だいたい私のブログなんか、読んでわかるひとがいるのか。こんなの、読んでおもしろいか? どういうわけか意外にけっこう立ち寄ってくれる人が多くいるもので、私の方が驚いている。

 この術語、もちろん出典は、オールディスの『十億年の宴』(1973)。彼が例に挙げているのは、ハーネスの『パラドックス・メン』、ドク・スミスの『銀河パトロール隊』、ヴァン・ヴォートの『非Aの世界』などだ。自覚があるかどうか知らないが、『スターウォーズ』はもちろん、『ガンダム』だの、『銀河英雄伝説』だの、『エヴァンゲリヲン』だの、『攻殻ののレギオス』だの、昨今の宇宙アニメやSFファンタジーのライトノヴェルのシリーズの多くが、その影響下にある。

 だったら「スペース・オペラ」とでも呼べばいいじゃないの、と言われそうだが、古代中国っぽい世界を舞台にした『十二国記』みたいなのになると、どうみても「スペース・オペラ」ではない。とはいえ、一種の「グランドホテル」的オペラであることはまちがいない。だが、「大河ドラマ」とは違う。

 重要なのは、『非A』のタイトルに象徴されるように、その世界全体を覆い尽くす非日常的・反現世的な、哲学的・科学的・宗教的な設定だ。いわば非ユークリッド幾何学でできたような、時間さえも直線的ではない世界を舞台として、なにもかもがぶち込まれ、話が暴走する。個々のプロットはやたら合理的かつ説明的で冷徹なのに、根本がくるっているから、全部がどうしようもなくひずんで、どことなく軽薄ないかがわしさが漂う。だから、バロックだ。

 一方、ワイドスクリーン、というのは、当時はやりのシネスコで、あえて画面をひずませるアナモレンズを使ったことから来ている。ふつうのフィルムに横幅2倍分の絵を詰め込んだように、キッチュで速い展開になる。そのくせ、結局、なにも進まない。だから、やたら長編シリーズになる。


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