アクション映画の2つのスタイル2

 もう一つが、泥沼スタイル。とくに80年代の『ダイハード』や『ランボー』などの肉体派アクションで好まれた。これは、主人公に都合のいい偶然はない、悪くなることはあっても良くなることはない、という原則で、危機が構成されている。

 ここでは解決などしない。小さな失敗が、どんどん悪くなっていく。靴を脱いだ方がリラックスできる、なんて言われて脱いだばかりに、マクレーン警部は、こなごなになったガラスの上を裸足で歩き廻り、ついにはビルから飛び降りるハメに陥る。

 そして、いよいよどうしようもなくなった最悪のところで、たった一つのクリティカルポイントで大逆転をすることになる。マクレーンの場合、妻を人質にされ、手を組んで敵の前に出て行かなければならなくなるのだが、カメラが廻りこむと、背中にはガムテープで、、、

 このほんの小さな、ちっぽけな大逆転まで追い詰めて、追い詰めて追い詰めていってこそ、アクション映画の醍醐味となる。とはいえ、ちっぽけなもので大逆転させるのは、容易なことではない。『サウンド・オブ・ミュージック』では、シスターが「罪を犯しました」とか言って、車の部品を持っているのなど、秀逸の大逆転だ。逆に、『ブレードランナー』のように、さんざんシリアスに展開しておいて、敵が突然、殺すのを止めた、などというのは、アクション映画として論外に腹立たしい。

 しかし、スピルバーグは、こういう泥沼スタイルのアクション映画全盛の中に、連続活劇スタイルを復活させる。『インディ・ジョーンズ』では、危機また危機なのだが、それぞれの危機は、積み重なることなく、どれもこれおもすっぽ抜けで解決する。いちばんひどいのは、大男に半月刀で迫られたときで、もうだめだ、というとき、ジョーンズはじつは手に銃を持っていた、というオチ。これは、すごい。こんなひどい手があったのか、と、ハリウッド中の脚本家が驚愕した伝説のオチだ。

 ところが、このオチは、じつは、脚本にはない。脚本では、ここでジョーンズと大乱闘、と、そのとっくみあいの様子がこと細かに書かれていた。しかし、ウワサによれば、ハリソン・フォードが喰いすぎで腹をこわし、下痢下痢で力がはいらない。速撮りで知られるスピルバーグは、とにかく先へ進めたくて、あれこれ思案していたら、ジョーンズの腰には最初からガンベルトがあった、というわけ。で、使わない方が変だ、というわけで、一発でカタがついた。


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