ディズニーの新作CG『アップ!(カールじいさん)』

 いまさらディズニーのCG、ったって、ディズニーのほとんどすべてのセクションでCGが使われている。なかでもCGらしいCGを作るピクサーの新作がもうすぐ公開される。3DCGではなく、3Dでの、いわゆる飛び出す映画だ。

 この種の飛び出す3D映画は、実写の時代から、いくつも作られてきている。カメラ2台で撮影すればいいだけだから、原理的には簡単だ。再生方式として、緑赤のセロハンめがねを使うのから始まって、偏向スクリーンだの、めがねシャッター連動だの、さまざまな方式が工夫されてきた。今度のがどんなものだか、よく知らないが、ディズニーは、もともと大したアニメーションメーカーでもなかったのに、『白雪姫』のカラー化で成功して以来、技術志向が強い。もっとも、その次の『シンフォニア』のアホなサラウンドで大失敗して、以来、シロアリスタジオに追い抜かされてしまい、ABCと組んでテレビで盛り返してくるまで大変だった。

 今度の3Dも、どこかやばそうな臭いがする。これだと確かに3D映画館の入りは悪くないだろうが、そんな設備をすべての映画館が新規に設備投資できるわけがない。となると、映画館側が嫌がるのは目に見えている。また、ブルーレイにしたところで、3Dテレビなんか、まだほとんど出ていないのだから、けっこう厳しい状況だろう。とはいえ、昔の『トップガン』みたいに、電器屋で3Dテレビにオマケで付けてもらえばいい、というところなのだろうか。

 そもそも、3D映画がダメな理由は、3D、飛び出す映画、というだけで、話がひどいのばっかりだったからだ。『ジョーズ3D』とか、ジョーズの名を汚すものでしかなかった。ディズニーのここんところの作品も、CGはきれいなのに、話ががさつで、どうしようもない。『カーズ』なんか、キャラクターが車だ、っていうだけで、それだけ。いかにも、男の子にオモチャを売ろうという下心が見え見え。『モンスター・インク』もひどかった。

 で、今度の『アップ』だが、元風船販売員のひねくれじいさんが、先に亡くなってしまった奥さんとの旅行の約束を果たそうと、大量の風船で、家ごと離陸してしまう、というところから始まる。この切ない設定は悪くない。ここにボーイスカウトの少年が巻き込まれる。老人と少年、その心温まる交流、これも定番だ。で、行き先は、ベネズエラだと。おいおい、それって、マダガスカル、に似てるぞ。死んだ奥さんがベネズエラに行きたかった、なんて理由は、説得力が無いよ。

 なんにしても、停まった時間、失われた希望を取り戻す老人、って、わかりやすい。というか、わかりやすすぎる。今は亡き奥さんとの出会いと結婚、幸せな思い出の回想シーンで泣かせる気だろう。オチは、少年との世代を超える友情、終わりなき新たな冒険、というところか。『ハウル』のばあさんをじいさんに代えて、歩く城のかわりに空飛ぶ家にしたのも、バレバレ。どうして、ディズニーって、こう独創性が無いんだろう。ミッキーマウスの昔から、どこぞのありもののアイディアををパクってばっかり。アイディアだけなら著作権上はクリアだ、って言うのかもしれないが、クリエイターとしては恥ずかしい。『マダガスカル』の後に出た『ライアンを探せ』には驚いたが、それよりはマシか。(そういえば、ディズニーに勤めていた人が、ネットネタだの新聞ネタだのをパクったって、日本では騒ぎになっているそうだが、元ディズニーでは、驚くには値しない。)

 エンターテイメントというのなら、技術ではなく、物語そのものを売るのが筋だろう。世界のCGの傾向は、もはやCGなどという技術ではなく、それで表現する物語の感動にシフトしている。CG自体は、むしろ実写っぽくない、CGらしい、人形劇のようなデフォルメされた人間味のあるキャラクターが求められている。今度の主人公のカール・フレドリクセンの造形も、この路線に乗っている。でも、どうもそれ以上の深みを感じない。この明らかにドイツ系の名前の人物、78歳の経歴に、歴史的なリアリティが感じられない。すくなくとも、中西部、とか、ベネズエラ、とかに、ムリがある気がする。見る前から言うのは気が引けるが、あまり期待できそうにないなぁ。