カヤ・ヤナールの中東ギャグ

 Kaya Yanar の『Was guckst Du !?(なに見てんだよ)』は、SAT1系の人気テレビ番組で、8年目。しかし、ドイツのテレビ番組の中でも、かなり毛色が変わっている。というのも、ウリが中東ギャグだから。

 この人、トルコ系ドイツ人。だが、ピーター・セラーズ並みに、オランダ人になったり、中国人になったり、国籍不明で変幻自在。もちろんトルコネタ、アラビアネタは、得意だ。トルコやエジプト、さらにはイラクのテレビから、オバカな素材を拾ってきたりもする。もともとフランクフルト大学(ゲーテ大学)の中退で、かなりのインテリだ。

 トルコ系も、もはやドイツに定住して、第二世代、第三世代。移民街は治安が悪い、などというのは、もはやはるか昔の話で、いまや移民街の方がきちんとした家族持ちが多く、食い詰めて流れてきた旧東ドイツ地域の連中よりまじめだ。とにかく宗教的な縛りがしっかりしているので、彼らは無茶をすれば、移民コミュニティから放逐される。そうなったら、ドイツで生きていく場所も方法もなくなる。そのうえ、いまや苦労してドイツの学校に学んだ第二世代がボランティアで第三世代の世話をしているから、自由放任のドイツ人の子供たちなどよりはるかに教育状況もいい。

 もちろんまだそれほど豊かではないし、トンチンカンなことも多い。しかし、働き者だ。信用もある。だから、最近は、移民街を離れて、一般的な住宅地に暮らす家族も増えている。中には、商売に成功して、ドイツ人を雇っている会社の社長になっている人も出てきた。隣のトルコ系ドイツ人、などというのも、実際、珍しいことではなくなった。

 それで、ARD(公共放送系)では、『TfA(Türkisch für Anfänger、初心者のためのトルコ語)』という連ドラも人気になっている。これも、すでに3年目。まさに、隣にトルコ人がやってきた、というもので、恋愛絡みであれやこれや。なんていうことのない話だが、設定や出来事に現実味がある。

 日本ではあいかわらず英語一辺倒だが、世界全体の趨勢からすれば、急速にスペイン語アラビア語スワヒリ語の方が重要になりつつある。なにしろカバーできる領域が面積的に広大なのだ。これらの地域に入り込んで、まともに英語が通じる人を探すのは、太平洋に浮かぶペットボトルを探すようなものだろう。だいいち、英語をむりに通そうとするよりこっちが現地語を話せた方が、好感度も高いに決まっている。

 いまや世界中にバイリンガルトリリンガルがいる。そして、文化の橋渡しとして重要なのは、日米どっちつかずの半端な帰国子女の英語バイリンガルなどではなく、きちんとした文化背景を持ってきている外国系の人々だ。日本が在日韓国朝鮮人の問題すらいまだに解消できないようでは、「国際化」など、まったくおぼつかない。