ヨーロッパ圏でのドイツ語の普及

 日本では、国際化=英語化、だと思っている連中が多いが、ほんとうに英語一辺倒で大丈夫なのだろうか。ヨーロッパでは、いまや英語ではなく、ドイツ語が急速に広がっている。オランダやデンマークポーランドチェコ、イタリア、さらにはフランス東部まで、若者は、いまや英語ではなく、ドイツ語だ。実際、旅行先で、英語よりもドイツ語の方が、道を聞く程度なら、そこらの人にも通じてしまう。なんでこんなことになったのか。

 中欧圏・東欧圏では、かつて外国語と言えばロシア語だった。しかし、そんなのはまったく役に立たなくなり、EU化とともに、学校は英語教育を取り入れた。ところが、実際に、ビジネスで交流することになったのは、イギリスやアメリカではなくドイツ。大勢のドイツ人がこれらの周辺国に資本を投下した。ドイツ人観光客もいっぱい来る。そして、さらに決定的だったのが、テレビ。以前のつまらない国営放送に変わって観るようになったのが、ドイツの衛星放送。RTLや3SAT、VOX、VIVAが空から降ってくる。受信機さえ買えば、周辺国でも問題なくクリアに見える。ドラマやバラエティはもちろん、ハリウッド映画まで、これらのチャンネルはドイツ語で流している。だったら、めったに来ないイギリス人やアメリカ人のための英語なんかより、ドイツ語をやった方が、テレビも楽しめるし、ビジネスにもなる。これが現実というものだ。

 アメリカには、もうカネは無い。もう自動車は買ってくれない。投資だって、観光だって、連中は、日本に来やしない。まして東欧並みに衰滅した国のイギリス人なんて、こんなところまで来るものか。だったら、いまさら、べつに英語なんかやらなくてもいいんじゃないか。中学生から何千時間もかけて、せいぜい一生に一度のグアム旅行でしか使わない英語を勉強するなんて、それでその人物の学力の有無を選別するなんて、どう考えてバカげている。そもそも語学なんて、学力とまったく関係ないぞ。アメリカへ行けば、バカでも英語を話しているじゃないか。そのうえ、遠からずアメリカが国際ヘゲモニーを失い、東欧圏のロシア語教育、江戸時代のオランダ語教育みたいにムダになるのは必至だ。

 日本では、電器屋と映画会社が系列化しているために、著作権を名目にやたらガードが堅いが、むしろ国家的文化戦略を考えるなら、衛星からおもしろいテレビ放送を垂れ流してしまえば、周辺諸国の人々も喜んで日本語を覚えてくれるし、観光にも、留学にも来てくれる。古い世界図式にへばりついて、こまい目先の利益を追っていると、日本語の方が存立しなくなる。