ドイツのアニメ事情

世界で日本のアニメが人気だ、などというのは、残念ながら10年も前の話だ。イタリアのテレビでは、古い作品を含めて、いまでも日本のアニメが少なからず流されているが、ドイツでは、いまやせいぜい『ナルト』と『ポケモン』くらい。それも、もはや完全に流行遅れとなってしまっている。

ドイツは、とにかく子供番組が多い。それもかなり良心的な作り込みだ。それらの最新のものと較べると、日本のアニメは、あきらかにもう質が劣っている。粗製濫造であることが見え見えだ。そのうえ、親たちが、その露骨な商業主義や安易な暴力主義を激しく嫌っている。そもそも、子供たちが食いつかない。

技術的にも、ドイツのアニメは、日本を追い越してしまった。日本は安い外国の労働力に頼れてしまったため、パソコン上とはいえ、いまだに絵起こしや階調塗りを「手作業」で行っている。一方、ドイツに、そんな安価な奴隷的作業人員は、もともといない。このため、CGの活用が一気に進んだ。もちろん日本アニメの基本技術をすべて取り込んで。しかし、ここでは、CGの方を階調化するのではなく、CGの方に合わせてアニメの方をぼかしにしている。

宮崎駿が危機感を持つのは当然だ。しかし、昨年の『ポニョ』にしても、日本アニメらしく彩度が高いとはいえ、線画の中に不透明色をベタ塗りする、セル以来の日本アニメの伝統を越えることはできないでいる。あれをやめるためには、生産体制の根本からして完全転換しなければならず、ジブリや関連会社をすべて清算することになってしまうだろう。宮崎一人であれば、彼は、あの年でも、新しい作り方にチャレンジする人物だろうが、彼らを喰わすためには、そうもいくまい。実際、往年の名作である『トトロ』や『ラピュタ』はともかく、『ハウルの動く城』などは、こちらのテレビでは、もはやゴールデン扱いにならない。その他のB級映画と一緒に、深夜放送の埋め草だ。

上の作品は、『小さなシロクマ:ラース』(2001)。原作はオランダの絵本(1987)だが、テレビシリーズになって人気が出、映画化された。テレビの方は、並の出来だが、映画版の方は恐ろしく高品位に仕上がっている。日本アニメにはない、パステルカラーの柔らかな色調は美しい。

下の作品は、『ローラの星』(2004)。これも、ドイツの絵本(2000)を下地にしている。飛行シーンなど、宮崎作品の影響が色濃いが、たんなる模倣ではなく、CG効果などを加えて、はるかに魅力的だ。

風変わりな首相や経産省とともに、ごちゃごちゃあれこれ言って、いまだに日本アニメで一儲けを企んでいる雑誌社やテレビ局、広告代理店、銀行の連中は、こういう世界の最新事情を理解しているのだろうか。危機感を持っているのは、宮崎氏だけなのだろうか。