ドイツリンゴ戦線の笑いどころ

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ドイツで秋と言えば、リンゴ。ちょっとした林の中に行けば、そこら中に野良リンゴの木があって、ボテボテと落ちている。もちろん食べられる。が、ちょっと皮が渋い。もっとも、店で売っているのでも、ドイツのリンゴは、小さくて、渋い。

で、この数年、派手に活動しているのが、ドイツリンゴ戦線、という政党。真っ黒い服を着て、赤い腕章を巻いて、隊列を組んで、町中でデモ行進をする。極右以外のなにものでもないようなふるまい。そして、叫ぶ、「リンゴジュース! リンゴジュース! 若い力の源は? リンゴジュース!」。彼らの主張は、明白だ。バナナやパイナップルを追い出せ。ドイツ人ならリンゴを食え。彼らには、女性部隊もあって、それはドイツ洋ナシ戦線、と言う。

彼らが出てくると、街は大騒ぎになる。治安警察が完全武装で出動し、彼らを取り巻く。そのうえ、本物のネオナチのバカ者たちまで出てきて、いっしょにシュプレヒコールを連呼する。もっとも、最近は、警察もいっしょに楽しんでやっているが。

というのも、これは、すべてパロディだ。根深いネオナチに反対を唱えても、いまひとつ、盛り上がらない。だったら、彼らの行動様式をパクって、その上を行ってしまえ、ということで、プロのデザイナーたちが、もっとかっこいいバカ騒ぎを考え出した、というわけ。価値を転倒する一種のカーニバルアクション。

だが、これは、笑いどころが難しい。それこそ、ネオナチのバカな兄ちゃんたちには、実際、まったく理解できない。だから、いっしょに参加して、はしゃいでしまう。あのね、これ、きみたちをからかっているんだけどね。まあ、警察も、最初は半信半疑だったようだから、仕方ないか。

バカは笑わない。というか、笑えない。このリンゴ戦線だの、洋ナシ戦線だのを笑うには、わざわざ言葉で語られることさえない歴史文化的な背景を理解していなければならない。ドイツで、リンゴだの、洋ナシだのというは、まさに野良でそこら中に落ちている、タダ同然のもの。そのうえ、すぐ腐って傷む。そんなものを大切にしたがるやつは、ドイツでは、バカ以外のなにものでもない。そのうえ、昼間からビールばかり飲んで酔っぱらっているネオナチ連中に対してさえも、高飛車に、おまえら、本物の愛国者なら、リンゴジュースを飲め、と、マジ顔で訴える。というのも、ドイツの安ビールの大半が、それこそヨーロッパ外からの輸入品だから。

大声で騒げば騒ぐほど、バカバカしさが強調される。それにネオナチまで、いつのまにか参加させられる。ネオナチはいけません、なんて、一言も言わない。むしろ、連中は生ぬるい、甘っちょろい、けしからん、と、ぶち上げる。それでいて、話をリンゴだの、洋ナシだの、あまりにどうでもいいところに先鋭化させる。リンゴを食わんくせに、愛国者とは言わせない、と言われては、反論のしようもあるまい。