サウンド・オブ・ミュージックはリメイク

 『サウンド・オブ・ミュージック』1964は、もともとリメイク映画で、オリジナルはドイツ映画の『トラップ・ファミリー』1956。曲が違うだけで、プロットも、カメラワークもそっくりなところが多い。だいいち、もともとがミュージカル映画だ。

 とはいえ、もちろんハリウッドの方が、演出も、脚本も、はるかにあかぬけている。余計な、細々したエピソードをばっさりやって、話の構造がしっかりした。クライマックスも、ドイツのオリジナルは、自由の女神前の移民局のエピソードで、亡命プロットが飛んでいるために、前とつながりが悪い。そして、最後にオヤスミの歌が来る。知ってのとおり、ハリウッド版は、オヤスミの歌が亡命への重要なプロットになって、ロルフの裏切りと、尼さん仲間の機転がクライマックスになり、最後は、冒頭に対応する、あの山登りの遠景シーンへと突き抜ける。こっちの方がおもしろいに決まっている。

 とはいえ、ドイツのオリジナル版も捨てたものではない。ロケや服装、歌は、アメリカのパチものなどとは比較にならない重みがある。もちろん、トラップ邸等々はやはりセットなのだが。

 このオリジナル版にはそのプロットが入れられているように、とにかくトラップ一家は、カネに困っていた。だから、トラップ邸だって、ホテルとして部屋貸ししており、執事も、ファミリーも、その従業員として働いていた。パーティだの、夜中に逢い引きだのどころの状況ではなかった。イタリア人などが出たり入ったり、その接待で、毎日、大騒ぎ。

 アメリカに渡っても、状況は改善せず、マリアは自伝を出し、その映画化権を、このドイツ映画に売り渡してしまう。ハリウッドは、これを『サウンド・オブ・ミュージック』にリメイクするに当たって、ドイツ映画から映画化権を譲り受けたのであって、トラップ一家には、まったくカネが入らなかった。まあ、それでも、これをきっかけに、トラップ一家の知名度はあがり、ロッジもツアーもうまくいくようになるのだから、悪いことではなかっただろうが。