ドイツへ留学したい人へ

 秋からドイツへ留学したい、という人もいるだろう。そんな人のために、いくつかアドバイスを。

 まず目的地を選ばなければならない。ドイツ語を学ぶ、というなら、ベルリン自由大学かどこか。まちがっても、ミュンヘンなどに行くものではない。方言が強くて、将来の仕事にはつながらない。哲学なら、ハイデルベルク社会学なら、フランクフルト。音楽や芸術、スポーツなら、ミュンヘンマインツ(オーストリアのウィーンはやめた方がいい)。工学ならシュトゥットガルトかケルン。医学は、専門分野次第。

 つぎに学校だ。これはドイツ語の能力による。まず語学学校に1年ないし数年、通って、語学能力資格も取る必要があるかどうか。そうでなくても、大学の講義のドイツ語は、英語やフランス語まじりが当然なので、ただドイツ語ができるかどうか以上に、かなり難しい。しかし、大学院以上になると、専門知識の方が重要で、語学は、英語半分でも、なんとかなる。

 さて、入り込むには、数年前から準備するのが理想的だが、たとえ直前でも、また、たとえ資格がなくても、じつはなんとかなる。というのも、学科の主任教授の権限が絶大だから。ドイツは日本より規則にうるさいが、しかし、だれも権限も責任も持たない日本より、運用が柔軟だ。いずれにしても、自分の能力と展望を客観的に説明し、説得できることが大切。英語でもかまわない。(こっちの大学人は、妙に英語の方が好きだったりして。)

 だが、これでは、けっこう敷居が高い、と思う人は、日本の語学学校や大学の派遣制度を利用するとよい。枠にさえはまっていれば、とりあえず行かれる。大学の寮か、ホームステイも自動的に準備される。ただし、これはかなり金額的に高い。それに、同じ出身国の連中だけで群れておしまい、かもしれない。

 いますぐは自信がないが、もうすこしがんばれる、将来は本格的に留学したいという人は、まずは夏の大学のフェーリエンクルツ(4週間)にチャレンジしてみるとよい。家は、大学側が、夏の間、帰省している学生の部屋(家具付)を紹介してくれる。大学の実際の講義の様子、こちらでの生活の様子なども体験でき、次に来るときの参考になるだろう。なにしろ各国からさまざまな学生が集まり、とても楽しい。

 情報は、留学業者や留学経験者よりも、他の街から見た客観的なこちらの評価を聞いた方がよい。業者は、どこでも客寄せしたいだけだし、経験者は自分の体験を大げさに言いたがる。たとえば、ウィーンに音楽留学、なんて、きちんと大学に在籍し、学位をとった、もしくは、きちんとプロデビューして、相応の新聞や雑誌で高いレヴューを得た、のでもなければ、たとえ日本人はだませても、こっちではむしろ否定的でしかない。それは、日本で本郷や駒場に住んで、東京「の」大学に行ったからといって、それがどうした、というのと同じことだ。

 いずれにしても、重要なのは、語学などより、専門分野を学ぶ意欲。語学は、こちらにきてからの方が、勉強もはかどるにきまっている。ただ年限を過ごし、とりあえず無事に卒業して就職することしか考えていない日本(アメリカの地方大学も)の学生たちとちがって、自分のために勉強して、自力でチャンスをつかもうとしている学生たちがヨーロッパには大勢おり、世界観も人生観も大きく変わるだろう。だいいち、そうでなければ、こちらでは卒業(修士学位修得)できないのだから。