ドイツのコメディ映画ブーム

 ドイツは、数年来、コメディ映画がブームだ。それも、DVDが5ユーロと、安値で売っている。(CD屋ではなく、本屋にあり、特売が多い。)

 ヒットの中心は、ミヒャエル・バリー・ヘルビック(Michael bully Helbig)。2002年に彼の『マニトゥの靴(Der Schuh des Manitu)』が大成功。それに続く2004年の『ペリオデ1(T/raumschiff Surprise Periode 1)』も、カルト的な人気を獲得した。ヘルゲ・シュナイダー(Heige Schneider)の作品も、すごいいけている。

 日本でドイツ映画というと、『ベルリン・天使の詩』に代表されるように、わけがわからんくせに、暗く淀んで、やたら長い、そのくせ、最後にオチも無い、というのが定番だが、そんなの、こっちだって、だれも見ない。見るのは、世界中で、日本の文芸映画マニアだけだ。逆に、こんな当たっている、おもしろいドイツ映画が、どうして日本に入らないのか、不思議だ。邪魔しているやつらがいるとしか思えない。(その逆も真で、日本でだれも見ないような映画ばかり、ドイツで日本映画として紹介されている。奇妙だ。)

 それはそうと、コメディ映画ブーム。ドイツ人は、むっつりしているばかりではない。じつは、基本的に、みんなおバカが大好きだ。そうでなければ、これほどコメディ番組があるわけがない。そう、このブームの背景には、ドイツにおける民放テレビの成立がある。映画の主演兼監督とつとめるコメディアンのほとんどが、RTL、SAT1、プロ7のような、民放テレビのコメディスケッチの出身で、彼らが、従来の、暗い淀んだ映画人を押しのけて、映画のヒットを次々と飛ばしている。日本のフジテレビの『踊る大走査線』と同じ構造だ。

 ヘルビックにしても、シュナイダーにしても、演技力はある、歌って踊れて演奏はもちろん作曲もできる、戦前戦後のジャンル映画から近年のエンターテイメント映画まで熟知している(プロットの借用やパロディにあふれている)、作品の作りも、最先端のCGから、おバカなミュージカルまで取り込んで、サービス満点。これでおもしろくないわけがない。

 もっとも、コメディ映画のドイツ語は、完全な通俗口語。たとえば、nichtsがすべてnixになる。東欧なまりのひやかしとか、韻を踏んだ言葉遊びとかも出てくる。これじゃ、日本の文章翻訳家に頼んでも無理だ。でも、中身は日本でも絶対に当たると思うのだが。だれか日本に入れるのなら、こういうの好きだから、私も手伝うよ。