講義の第二回目

 先週は自己紹介と日本文化の話で、お茶を濁したが、今日からまともな講義。とにかく、こちらの大学の学科の気風がでかい文化史好みなので、それに合わせて、美術史における線画の位置づけから。

 この近辺では、映画学科は、フランクフルトのゲーテ大学にもあるが、マインツグーテンベルク大学の映画学科とは、基本的に相性がよくない。フランクフルトは、基本的に左がかっていて、理屈っぽい。もっとはっきり言ってしまえば、いまだにマルクス主義的で、エイゼンシュタイン信奉者の集まりだ。それに比して、こっちの大学は、先生方はともかく、学生たちは現場志向で、実際、テレビ局だの、映画会社だのに就職する。

 が、今週末の土曜26日、ちょうどフランクフルトの映画博物館で日本アニメ展を、また、現代美術館で日本マンガ展をやっているので、両大学の映画学科の学生が夕方から集まり、翌朝まで徹夜で映画博物館でパーティをやる、と言う。ちょっとおもしろそうだが、どうにも体力的に無理だ。

 この日本アニメ展と日本マンガ展、図録をもらったのだが、頭をかかえてしまった。だいたいタイトルがガネッチュだ。画熱中という字を当てたいらしい。そんな日本語あるか。サルゲッチュじゃあるまいに。フランクフルト・アルゲマイネ(ドイツの高級新聞)ですら、記事がおかしい。新聞で使っている写真が、足長・手長の像だ。あれ、マンガか。また、図録は、村上ではなく、会田を採り上げたのはいいとしても、その前後もエロアニメとエロマンガの話ばかりしつこく出てきて、ふつうの『スラムダンク』とか、『ドラえもん』とかが無い。版権の問題があるのだろうが、それ以上に企画者の趣味に元凶があるように思う。で、だれがこんな悪趣味な展覧会で、ドイツ人や日本政府から大金をせしめたのかを調べたら、ハナダヨシタカだと。たしか、シリアガリなんかとつるんでる、日本の北の方のやつじゃなかったか。

 だが、キーファー先生は、行ってみるとよい、と親切に勧めてくれる。とはいえ、こんなの見るまでもない、見に行くまでもない、というのが、正直なところ。困るんだよな、こういう変ちくりんなエロマンガをセンセーショナルに日本文化として紹介されると。これなら、こっちの学生たちが自分たちで手作りでやっている日本コネクションの方がずっと誠実だ。悪趣味な日本人に依存するより、こっちの日本学の先生方や学生たちの方が、ずっと情報としてまともで正確なのに。そして、こういう政治的な企画が、かえって年来の地道な芸術文化交流を踏みにじって潰してしまっていることに気づかない日本政府の無神経さこそ、しょせん日本文化輸出の限界なのだろうなぁ。