図書館の楽しみ

 図書館はよい。新刊書ばかりの書店と違い、整然と番号順に同分野の書籍が、新しいものも古いものもいっしょに並んでいる。だから、その書棚を眺めているだけで、その分野の研究がどのように発展してきたかが、一目瞭然である。

 文学なども、一冊一冊は、つねにセンセーショナルだが、書棚でみれば、同じような趣向のものが十年くらいの間隔を開けて、繰り返し書かれていることがわかる。企業小説、科学小説、怪奇小説、社会小説、ファンタジー小説、等々、みんな忘れてしまっているだけで、思い出してみれば、似たプロットを用いている。

 最近はまた、装幀も気になる。ちかごろは装幀デザイナーなどという輩が、著者と同じほどにギャラをふんだくっているようだが、こうして多くの本を見比べてみると、あきらかに才能のあるデザイナーと、まったくダメなデザイナーがいるのがよくわかる。

 ものさしを持ちながら、図書館の中を歩き回り、適当な本を手にとって、10字10行、天と袖を計るのは、なんとも静かな楽しみだ。同じ原稿でありながら、才能のあるデザイナーに出会うか、それとも名ばかりのデザイナーに出会うかで、文体に匹敵するほどイメージが異なってしまう。

 図版の有無にかかわらず、理系の本の方が美しかったりする。行間が正確に50%だったりして、版面全体に秩序感がある。そして、意外に、文学書の方が無神経なのに驚く。戦中戦後の紙不足の時代でもあるまいに、二段組で、行間も無く、ぎっしり文字を詰め込む、などというのは、人に読ませる本の体裁ではなかろう。