古代1 ソクラテス前(~BC400) アルケーの探求2

哲 学 概 観

 ギリシア人たちがもともと持っていた思想は、どの民族も持っているような擬人的な自然神による断片的な神話的、呪術的説明にすぎなかった。しかし、これらは、彼らがギリシアの地に定住し、ポリスが成立するころ、いわゆる《ギリシア神話》として体系的に整頓された。つまり、神々は父長制的親縁関係の中に位置付けられ、また、その権能も明確に分け定められ、さらに、神々といえども歴史的因果の支配を受けるようになった。

 しかし、これだけならば、他のいくつかの民族にも見られる単なる神話体系にすぎない。彼らが《哲学》へと踏み出したのは、この擬人的、比喩的説明に満足せずに、この比喩の比喩しているものそのもの、つまり、自然諸現象の原動力体、すなわち、〈実体〉を探求しようとしたことにある。そして、このような傾向が小アジアや南イタリアなどギリシア周辺地域から起こったことは、異文化との接触とも無関係ではあるまい。そこでは神話の絶対性はないがゆえに、むしろ、さまざまな神話に表現される同一の〈元のもの(アルケー)〉を、どの神話にも属さない、しかし、どんな人々にも理解できる合理的な論理で語る必要が出てきたのであろう。

 古代哲学は、紀元前6Cから紀元3Cに相当し、大きくは、ソクラテス未前と、前5C後半以降のソクラテス以後に分けることができる。さらに、前者の哲学は、《ミレトス派》《ピュタゴラス派》《一元主義》《多元主義》《論理主義》の5つに、後者の哲学は、ソクラテスプラトンアリストテレス、ヘレニズム期の4つに分けられる。また、タレス前の学者を「テレオロゴイ(神話学者)」、ミレトス派多元主義者を「ピュシオロゴイ(自然学者)」、論理主義者を「ソフィステース(知恵者)」、ソクラテスプラトンらの学者を「フィロソポス(愛知者)」とも言う。つまり、《哲学》は狭義にはソクラテスに始まる。

 アリストテレス以前の哲学に関しては、アリストテレスが『形而上学』Α-3~7において、彼以前の哲学の歴史を簡潔に論じており、この叙述を尊重することになっている。実際、プラトン以前の哲学者は、著作が断片的にしか残っていなかったり、そもそも著作活動自体をしていなかったりで、彼らの思想は、わずかに残る断片からか、プラトンアリストテレス等の著作の中の言及、引用から再構成して復元されているにすぎない。