『インターステラー』を読み解く

SF論の講義で『インターステラー』を題材にした。鬼才ノーラン。近頃、本のSFがファンタジー化、というよりライトノベル化する一方で、映画では『ゼロ・グラヴィティ』など、けっこうなハードSF、つまり、ガチ科学もので傑作が出ている。その中でも、…

ノーベル文学賞

イシグロが取った。ボブ・ディランなどに較べれば、きわめて穏当なところだろう。取って当然だ。『日の名残り』は、技巧的にも、内容的にも、世界文学に名を刻む出来だった。一方、『私を離さないで』となると、むしろたちの悪い俗物SFのようで、あまり好…

ハインライン『夏への扉』のあらすじと読み方

大学の教養演習(SF論)の今年の夏の課題図書だ。学生たちは、きちんとこれが読めただろうか。 なぜこれが日本でしか受けないのか。駄作だから、魅力が無いからではない。生々しすぎるのだ。とにかく、日本のSFファン、とくに70年代の連中は、ノリでSF…

『オーム・シャンティ・オーム』はインド映画じゃない

学生たちに見せたのだが、ちょっと失敗したかなと思っている。一般教養なので、とにかく映画の基礎が無い。うわぁ、インド映画だ、というところで頭が止まってしまっている。ネットを見ても、宝塚ファンを含め、同じような「バカ」ばっか。結局、見えても見…

成城学園の合同クラス会

地方だ、海外だ、と、東京を離れて、もう何年になるやら。成城学園が百周年とかで、中高校舎も新しくなり、合同クラス会があったとか。行かれなかったが、写真だけ頂いた。京大の石川くんは、まめに顔を出しているようで、えらいなぁと思う。親しかった渡辺…

『恋はデジャヴ(グランドホッグデイ)』

子供のころ、寝る前に母親が本を読んでくれた。王子さまだの、お姫さまだの出てくるから、すっかり騙されていたが、後で気づいた。あれは、スコット卿の『アイヴァンホー』だ。ちょうど文庫の上巻が出たころ。自分が読みたかったから、読んでくれただけだっ…

『ナポレオン・ダイナマイト(バス男)』といじめ問題

学生に見せたが、きちんとわかるやつがいる一方、表面的なおもしろさしかわからんやつ、それすらもわからんやつも少なくなかった。第一には、自分たちに似すぎて、わざわざ映画で見る意味が無い、という反応だろう。第二は、似すぎているからこそ、見たくな…

スマホ時代の電子書籍の書き方

電子書籍が微妙に息を吹き返している。専用電子端末を買わないといけないのが、大きなハードルだったのだが、いまやスマホがパソコンを抜くほどの普及率。ミュージックダウンロードやニュース配信も、ネタ切れ、息切れのところで、とりあえずはLineとYouTube…

「願いごとの持ち腐れ」とクラシック業界

NHK合唱コンクールの中学校の部の課題曲。みんなの歌ではAKB48が歌っていたからか、商業主義だの、視聴率主義だの、音楽的価値が低いだの、日本語の発声を知らないだの、なんだの、とくに合唱部指導者たちが文句を言っている。まあ、一言で言えば、…

『朝まで生テレビ!』30周年

今日、記念パーティだとか。お招きいただいたが、大学が始まったばかりで、伺えず、とても残念だ。プロデューサーの吉成氏や久利先生、番組スタッフ、田原氏や渡辺氏、美里女史など、論客出演者と、お世話になった方々はあまりに多く、その恩は年とともに深…

パソコンのオーバースペック

新学期、新生活で、電気屋のチラシを見ると思う、こんなすごいの、使えるのか? 3DCGゲームだの、4K動画編集だのするのでなければ、ワードくらいだろう。エクセルだって、縦横集計くらいか。どうせメインはスマホのSNSなのだろうし、いったい普通の…

物語産業の閉塞感

ハリウッドでは、『LA LA LAND』のアカデミー賞がグダグダに終わった後、やたら実写版『美女と野獣』の話題をむりやり盛り上げようとしている。LALAがしろんぼジャズで、アカデミー賞の白人優位のそしりを避けるように、受賞までごたごただったが、こんどは…

曜変天目茶碗の真贋

あんなん、見るからに化学塗料なんか使ってないだろ。真贋はともかく、見てわからんのなら、専門家だかなんだか知らないが、売名とのそしりを受けても仕方あるまい。 それより、その自称専門家とやらの方が、茶碗よりはるかに、うさんくさい。そもそも、曜変…

『日本風景論』と現在

1894年、日清戦争の始まった年、志賀重昂が出した。当時、31歳。88年から政教社で週刊(隔週刊)『日本人』を出し、「国粋主義」を唱えていた志賀が、日本風土を、その多様さ、水蒸気、火山、流水などから具体的に論じたもの。いま読んでも、十分におもしろ…

『ノートルダムの鐘』の聲の形

『美女と野獣』に続いて劇団四季がやっている。まあ、みんな、うまくなったから、そつなくこなすだろう。また、なにしろ、あの金額だ。豪華なメガミュージカル仕立てで、楽しませてくれることだろう。機会があれば、ぜひ見に行きたいとは思っている。 ただ、…

LA LA LAND の大ヒット

『フローズン(アナと雪の女王)』のあと、米国映画は冴えなかった。ところが、この夏あたりから、この『ラ・ラ・ランド』の評判がかなり広まってきてきた。そして、12月、公開とともに大ヒット。来年には日本にも入ってくるだろうが、本来はあくまでクリス…

ヨーロッパのクリスマス回帰

日本では最近はコカコーラすらクリスマスCMをやらない。が、ヨーロッパでは、例年、12月、待降節を過ぎるとテレビはクリスマスCMが腕を競う。日本と同じ30秒というものもないではないが、より長い3分もあるCMもあるので、ドラマ仕立てで、しっかりしたもの…

ASKAの東京オリンピック2020テーマ曲

28日月曜の『ミヤネ屋』で井上公造が本人から送られてきたと言って音源を流してしまった。やつに渡す以上、機会があったら流してくれ、というのが、もともと含意されていた、というところだろうが。 長調単純和音のアウフタクトで4度入り、ファミレー、ファ…

ミステリの二重構造と第四者

ミステリはかならず二重の構造を持つ。1つは隠すべき物語、そして、2つめはその綻びを繕う物語。デテクティヴが追う殺人事件は後者。しかし、べつに殺人でなくても、失踪でも、なんでもかまわない。とにかく不可解な出来事があり、そのハウダニットとフー…

原恵一『百日紅』のこと

うちの学生、数百人に見せたが、かろうじて半分くらいがどうにか、というところ。後は筋が追えない。まあ、芸術系の大学と言っても、なんの芸術とも縁の無い、芸術というものを商品として消費するだけの連中が、もともと半分以上。世間よりまし、という程度…

弦楽器はなんでもあり

ヴァイオリンなんて、完成された楽器、だと思っていた。なにしろモノが高いし、たとえ新作でも骨董品のごとく大切に、というのが相場だった。ところが、この十年来、中国製で1万円台のが大量に出現。これに追随して日本製、米国製でも、わけのわからないも…

サンダーバードS号、であるか。。。

この番組、いったいいつやるんんだか、わかんないよ。不定期放送って、あえて見せたくないんだか。制作が間に合っていないなら、月2回、第一、第三土曜、とか、決められないものかね。そもそも、教育ではなく総合で流す意味があるんだろうか。それも、この…

ロバート・マッキー氏の新著『ディアローグ』

手づから送っていただいた。恐縮至極。さっそく読み込んでいる。オースティンら日常言語学派のスピーチアクトの概念を拡張し、映画だけでなく、小説や演劇の対話の深層を分析している。もちろん、後期ヴィットゲンシュタインに言語ゲームというコミュニケー…

ラジオ体操という秘密結社

夏休み、と言えば、ラジオ体操。きっちり6時半。近所の公園でやっている。うちの子たちも、バタバタと毎日。老人会と子供会、ということだが、まあ、出てくるのは決まった面々。それでも、生活習慣となると、その前に目が覚める。 最近の体育の先生に言わせ…

DFP超極太楷書体は皇室御用達

ダイナフォントは、個人的には、わりに好きなセット。クセがなく、原稿やプレゼンでもよく使っている。だが、ダイナフォント、安いせいか、自称「プロ」のデザイナーには、あまり評判が良くない。やつら、やたら妙な、高価でアクの強いフォントを礼賛したが…

映画版『鉄塔武蔵野線』を読む

今年の演習は、けっこうツワモノの学生がいるので、安っぽい話はできない。ここ数回は、ドラマ、それもミニマムなものからドラマの本質を理解する、なんていうことをやっている。アクションだの、爆破だの、無し。トリックのドンデンも無し。登場人物も少な…

ポケモンGOとナムコ

CNNなどだと、米国でえらい騒ぎになっているらしい。韓国でも、すでにできる場所があるとか。明日にも日本で発売?になるだろう。じつは昔、できたばかりのゲーム業界にも、いっちょかみしていた。とはいえ、学生のころ。あれからなんと、ちょうど三〇年…

絶対音感よりも絶対調性感

世間で、絶対音感が、とか言うけれど、電子楽器世代で子供の時からずっと完全固定の音程を聞きなれてきた者なら、440Hzはもちろん、その他の音程も耳でわかるに決まっている。自分の楽器のチューニングに音叉なんかいらない。 ところが、日本のピアノは、442…

江戸川乱歩の『陰獣』

まあ、日本の大学の国文学じゃ扱わないだろうな。ところが、ヨーロッパでは、けっこう評価が高い作品だ。わざわざ翻案して映画化までしている。もちろん日本でも、なんども映像化されている。通俗的で伝統的な日本の耽美猟奇的エログロの体裁を採りながらも…

ヘミングウェイとゲルホーン

HBOのドラマだ。154分、2時間半以上の大作だ。日本ではゲルホーンがまったく無名であるために、邦題は『私が愛したヘミングウェイ』に変えられてしまった。だが、これはゲルホーンの回想録であり、まちがいなくゲルホーンの方が主役だ ヘミングウェイにつ…